弁護士法人 名古屋南部法律事務所

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担当事件紹介2009/08/10

中電アスベスト 企業責任認める画期的判決

[弁護士]田巻 紘子

7月7日、名古屋地裁民事第1部(多見谷寿郎裁判長)は、中電元従業員の藤原健二さんが在職中にアスベスト粉じんを浴び、定年退職後に中皮腫を発症したことにつき、中電に対して3000万円の慰謝料の支払を命じる判決を出しました。

電力会社に対して、労働者のアスベストによる中皮腫発症につき、会社の責任を認める判決が出されたのは初めてで、大変画期的な判決です。

判決の内容

判決では、健二さんが中電で行っていた仕事のうち、火力発電所建設時の試運転業務は、大量に石綿製品(保温材・断熱材)が取り付けられて粉じん化している中で作業していたので、健二さんが直接石綿製品を取り扱っていなくても、中電は、健二さんをそのような環境で働かせるにあたってアスベストの危険性・使用箇所を周知し、防じんマスクを適切に備え付け、着用するよう指導するなどの配慮を尽くす義務があったとしました。しかし、中電はそのような配慮義務を怠ったため、中電に責任がある、と認めたのです。

また、その前提として、中電は、昭和30年代には、国がアスベスト健康被害についての研究結果を公表したり、アスベスト健康被害防止のための法令・通達を整備していたので、アスベストによって石綿肺などの健康被害が生じることを予見(予測)して対応しなければならなかった、と判断しました。

判決の意義

この判決には大きく3つの意義があると考えられます。

1点目は、電力会社でのアスベスト健康被害と会社の責任が正面から認められた点です。火力発電所等では熱を用いて発電しますが、発電効率を上げるために大量のアスベストを含む保温材・断熱材が使用されています。今まで電力会社でのアスベスト問題は社会的に問題が明らかとされてきませんでしたが、被害者は健二さんだけではないはずです。現にこの裁判を支援する中電元労働者が健診を受けたところ、高い確率でアスベスト疾患が発見されています。

2点目は、使用者である会社は、石綿肺などアスベスト健康被害が生じることを昭和30年代から予測して対策すべきだったと述べている点です。昭和30年代という古い時期にアスベスト粉じんをあびた他の労働者についても救済の可能性を開く判決と言えます。

3点目は、直接アスベスト製品を取り扱っていない労働者についても、アスベスト粉じんの中で作業させていたなら、使用者である会社の責任が認められる余地があると認めた点です。これも、他の労働者の救済の可能性を開くといえる点です。

中電は判決翌日、判決を不服として控訴しました。控訴審でも、中電の火力発電所の職場環境が劣悪だったこと、アスベスト被害に対する使用者の責任が認められるよう、さらに支援の輪を大きくして取り組んでいきたいと思います。引き続きご支援をよろしくおねがいします。(弁護団は当事務所からは田巻紘子弁護士)


2009年08月の記事

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