[弁護士]田巻 紘子
原子爆弾がヒロシマ、ナガサキに投下されてから今年で64年です。そして今でも、原爆の被害は続いています。しかしながら、政府の被爆者援護政策は極めて不十分であり、原爆症との認定を受けて医療特別手当を受給している被爆者は全体の約1%に過ぎません。認定基準のハードルが高く、申請しても原爆症と認定されないのです。
この状況を変えよう、と全国22の裁判所で、約300人の被爆者が、命がけで集団訴訟に取り組んでいます。名古屋の訴訟は4名の原告でたたかわれており、2007年1月には、名古屋地裁で原告4名のうち2名を原爆症と認め、2名については認めないという判決が出されました。現在、名古屋高等裁判所で裁判が続けられています。
全国の訴訟ではほぼ、原告である被爆者側の言い分が認められ、国の認定基準の誤りが明らかになっています。
■認定基準改定したが
集団訴訟の成果と支援する世論の広がりを受け、政府は2008年4月に従前の認定基準を改訂しました。新基準もまだ不十分ですが、従来の認定基準が誤りだったと政府自ら認めていると言え、極めて重要な基準改定です。
この新しい審査の方針を使い、これまでの不認定処分を見直す作業で、2008年6月、名古屋訴訟原告・甲斐昭さんが原爆症と認定されました。
■画期的な判決
甲斐さんは原爆投下日に広島市で救護活動を行った入市被爆者です。政府はこれまで「入市被爆者には被爆の後遺症は生じない」と頑なに認定を拒んできました。ですから、今回の認定は大変画期的なことです。
■更なるご支援を
名古屋ではまだ3名の被爆者が認定を求めて裁判中です。全国でも認定を待つ被爆者がたくさんいます。一刻も早い救済のために、皆さんの引き続きのご支援をよろしくお願いします。
岩井羊一弁護士、浜島将周弁護士、田巻紘子弁護士
2008年12月の記事