共同親権制度の導入を含む民法改正案が昨年の通常国会で成立しました。
巷では、「単独親権制度のせいで子どもに会えない」という言説が広まっていますが、当事者間で協議ができない場合には、子どもの最善の利益にかなうよう裁判所が審判で命じることができ(民法766条)、子どもに会えるどうかという問題は、親権制度の定め方に原因があるものではありません。
現行法では、離婚後の同居親が子どもについての決定を行う場合、単独でもできるし、別居親と一緒に決めることもできます。しかし、共同親権制度が導入され、共同親権が適用されれば、単独行使は、例外事由にあたらない限り許されなくなります。後に「自分の承諾なく子どもに手術を受けさせた」等と損害賠償責任を問われることもありえます。共同決定の合意すらできない父母に、子どもに関する決定を共同で行うことを裁判所が強制すること(非合意強制型共同親権)は、弊害の大きさが懸念されます。
共同親権制度の導入を心配する当事者の多くは、DV被害者や子育て中のひとり親で、声をあげにくいという現状があります。
施行までに1年の猶予があります。
命に関わる深刻な問題ですので、広く理解が進むことを願います。
弁 護 士 岡 村 晴 美